着付けで満足してもらうのに大事なことは?

2017.03.26

「わ~。ブラジャーはずさなくていいんですかぁ?今日は若い着付け師さんで良かったーー♪」
と、喜んでくれたのは二十歳のお嬢さん。その日は私より4~5歳年下の着付け師と一緒に着付けをしていた。
私たちが若いかどうかという議論はひとまず置いといて(笑)
何がそのお嬢さんをそんなに喜ばせたのか?・・・というお話。

結論から言えば、着付け教室で習うことは、現場では必ずしも当てはまらないことが多いのだということ。

そのお嬢さんは、身内の結婚式や何かで短期間のうちに3回も振袖を着る機会があったそうだ。
その3回目が、私たちだった。
そして、過去2回の着付けでは、年配の着付け師さんから「はい、ああやって!こうして!」と、有無を言わさず指示されて、イヤだな~と思いながらブラジャーもとらされた。
その上、着物はきついのが当たり前だとばかり、グイグイ締められて、苦しくてしょうがなかった。

とまあ、そういうことだったそうだ。

「え?だって、・・・イヤでしょ?」
と答えたのがその時の相棒さん。その時には主に着付けしたのは、その相棒さんのほうだった。

・・・だって、ねえ?イマドキ、ブラジャーはずせって言われて「はいそうですか」と即座にはずせる人は少ない。
いくらそこで、ああだから、こうだからと説明してこっちのほうがいいのよって言ったって、イヤな人にはイヤなのだ。

イヤなことを強制させられたと思ったら、あとに残るのは不快感だけ。クレームのほとんどは技術的なことじゃなくて、ものの言い方だったり、態度だったりするらしい。その場では仕方ないかと思っても、後々だんだん腹が立ってきたりするようだ。
だからお嬢さんは、その時の不快感を私たちに聞かせてくれた。

きっとその時の着付け師さんは、自分の主張を押し付けようとか、こうでなきゃダメとかいう押しつけがましい気持ちは全くなかったんだろうと思う。自分がいつもやってる通りのことを当たり前にやっただけなんじゃないかな。
むしろ親切心もあったかもしれない。
なのに、お嬢さんには、そうは受け止められなかった。

気持ち的にイヤだったから、「あの時は苦しかった」という気持ちだけが残っちゃった。
逆に今回は満足できたから、「今回はラクで良かった」と、言ってもらえたんじゃないかな。

着付け教室では、「ブラジャーははずした方が良い」と、習う。でも、お客さんの体形は全員違うから、必ず全員がはずしたほうが良いわけでもないし、むしろ、はずさないほうがキレイに仕上がることだって、よくある。

「はずしたほうが良いですか?」と聞かれる方には、外したほうがラクには違いないことを伝えた上で、でも、
「体形にもよるし、ブラジャーの形状にもよるから、ちょっと見せて頂けますか?」
と、私は答えるようにしている。はずさなくても大丈夫だと伝えると、ホッとした顔をされる方が多い。

はずしてもらわないとうまく着せられないような体形・下着だったりする場合には、「申し訳ないけど、外してもらえますか?」と、相手の目を見ながら”ごめんなさい”の気持ちを最大限に表しながら、伝える。

お客さん相手の仕事って、技術だけでうまくやれるわけではない。やはり、人と人とのことだから、感情がついて行かなかったら、良い仕事はできない。

人生の中でそう何度もあるわけじゃあない、特別な日のお手伝いをさせて頂く仕事。その時のお客さんにとっては、特別な日なのだということを忘れずに、気持ちに寄り添った仕事をしなくちゃいけないな~と、思う。

「目の前にいる人に全力で尽くせ。お客さんが喜ぶことだけをしろ。人は1人で生きてるんじゃない。相手があって、生かされて生きている。人が喜ぶことだけを全力でやれ。」

って、この頃セールスライターたちの勉強会で聞かされる。・・・全く、その通り・・・かな?

とかなんとか、カッコイイこと言っちゃってるけど、私もまだまだ下手なことを言ってしまって注意されることが多い。
注意してくれる人がいるのって、とってもありがたい環境だ。(笑)