最近、ウチの習字教室の生徒ではない小学生に、書道教師として接する機会が多い。
昨年度・一昨年度にも、岩国小学校の書写授業のアシスタントに行っていた。
だからよその書道教室に通っているお子さんの字を見ることも多い。
中にはびっくりするほど上手な筆文字の子が時々いる。
聞いてみると、たいてい、ある先生の教室の生徒だ。仮に「A教室」としよう。
「A教室の先生、一体どんな指導法をしておられるのだろう??」
と、興味を持っていた。
そして、「私にはとてもじゃないけど、小学生をここまで指導することは難しいな」と、感じていた。
先日接したのは、そのA教室に通っている子。
自分の教室の時間帯について気になっていたこともあり、そのA教室の時間帯を聞いてみた。
・・・いやはや、驚いたのなんの!
「普通は2時間なんだけど、私は遅いから4~5時間かかる。」と言う。
つまり、夕方4時から、夜の8時、9時まで。
ひょえ――――――っ!!
小学生が夜の8時、9時まで!?
4時間も5時間も習字に打ち込む!?
なるほど。
ちゃんと書けるまで帰らせてもらえないから?
あるいは、決められた枚数を書かないといけないから?
・・・必然的に上手になるのか。
「すごく厳しい先生で、そこへ通ったらみんなメチャクチャ上手になるらしい。」
とは、以前から保護者たちのうわさで聞いていたA教室。
上手になる秘密が分かって、納得した。
私は、そこの先生にお会いしたことはないけれど、そういう指導方法も分かる気がする。
せっかくご縁あって指導するなら、全力で良い字を書けるように導きたいと思っておられるのだろう。
だから、筆の使い方、文字の形など、真剣に指導しておられるに違いない。
習う子供たちも、一所懸命書いているのだろう。
いったいどのような言葉をかけ、どのようにやる気を出させていらっしゃるのかはわからないけれど、それはそれで素晴らしいと思う。
実際、その教室の子供たちの筆文字は美しいから。
昔を思い返してみると
今こうして指導者になっている私も、子供の頃から習字はとても好きだった。
小学生の頃から、長時間書いていた。
でもそれは、書かされていたのではなく、好きだから勝手に書いていただけ。
先生は優しくて、ムリヤリ書かされた記憶はない。
集中力の続かない子は、ちょっと練習しただけで「もうくたびれてきたね?今日は終わりにしよう」と、帰らされる。
一方私は・・・
誰よりも早く行き、書き始める。
ぽつりぽつりとお友達がやって来る。
だんだん人数が増えてきて、にぎやかになってくる。
そして、みんなはチョロッと書いて提出し、帰っていく。
とうとう私だけが最後まで残り、「和恵ちゃん、もう終わりにしよう」と声をかけられて片づける。
・・・今振り返ってみると、迷惑な存在だったかもしれないけど。(苦笑)
・どうやったら先生のお手本みたいに書けるんだろう?
・同じ人間なのに、なぜ先生はあんなに上手に書けるんだろう?
・なぜ私はお手本のように書けないんだろう?
不思議で不思議で、一所懸命書いていた。
・・・書いて書いて、書きまくった。
だけど今は・・・。
今、ウチの教室に来る子で、かつての私のように自分から進んで書く子はいない。
集中力が続かない。あっという間に飽きてしまう。
「あと何枚書いたらいい?」
なんていう質問がいつも出てくる。
「私は特殊だったんだろうな~」と、ウチの生徒たちを見て思っていた。
私はたまたま好きだったから、あんなに書けたんだろうな。
もしそのA教室が、
かつて私がやっていたような習字を、すべてのお子さんにさせているのだったとしたら、なんて素晴らしいんだろうと思う。
自発的にやる気を起こさせて、長時間書いても疲れない子を育成しておられるなら、素晴らしい。
だけど、どうやらうわさでは、メチャクチャ厳しい先生だという話だ。
もちろん、うわさに聞いただけで、自分の目で見たわけではないから、そこの教室が実際どういうものなのかはわからないけど。
とは言え、
筆文字を極めたいなら、いいかもね?
例えば、お家がお寺の子。お宮の子・・・。
有無を言わせず、美しい字を書けるようにならなければいけない境遇にあるのなら、そういう子には、おススメかもしれない。
だけど私みたいに、こぎれいな字が書けるようになりたいな。
っていうだけの意識の人には、・・・どうだろう??
私がそもそも習字を始めたきっかけは、
「小筆でカッコよく書きたいな」だった。
キレイに書きたいのに書けないから頑張っていたんだけど、たまたま私に根気があっただけのこと。
ではウチの教室では?
今、私が生徒たちに身につけさせようとしているのは、
学校の先生から認められるレベルのキレイな字が書けるようになるということだ。
正しい筆順を身につけて、美しい文字を書けるようになること。
美しい文字とは、どういう文字で、それは活字とはどういうふうに違い、どうやったらキレイに見えるのか?
子供にもそういったリクツを教えて、知識から美しい文字を書けるように指導している。
大量の練習から体に叩き込むのではなく、知識として理解することから、早く美しく書けるようになる。
・・・これが、私が望んでいる、美しく書くコツ。
その他は、ちゃんと挨拶ができること。
月謝袋を出す時にはどうするのか?
稽古が済んだら、なんと言って帰るのか?
玄関から家に上がる時にはどうやって靴を脱ぎ、どうやって揃えるのか?
道具はどうやって片づけるのか?
墨をこぼしたら、どうやって後始末するのか?
手の洗い方は?
雑巾の絞り方は?
使った新聞紙や反古をどうするのか?
そんなことがきちんとできる子に育てたい。
それは、我が子が外に出た時に恥ずかしくない人になってほしいという願いから。
もともと、ママ友からの依頼で始まったこの教室。
我が子も、お友達も、良い子に育ってほしい。
字を上手にするのはもちろんだけど、良い子の基準の一つとして、キレイな字が書けるようにすること。
そしてそれだけではなく、きちんとした子になること。
・・・みたいな思いで始めた教室だから。
メチャクチャキレイな字を手に覚え込ませるだけの指導ではない。
そこそこキレイな字を書くにはどうやったらいいのかを、知識として理解したうえで、美しく書く。
それが一番短時間で上達する方法であり、目的はそこにこそある。
・・・と、私は思っている。