「よ~く手本見て書くんよ。」
「ちゃんと見とるよ。」
「・・・。」
習字教室での子供とのやり取りです。
〈こんなはずじゃない。この子は前にはもっと上手に書けていたのに。〉
・・・なんてことは、思っていても口に出してはいけない。
他人と比べてはいけないのと同様、本人の過去と比べて「あの時はこんなに良かったのに」なんて、言ってもだめ。
っていうことは、教育の基本ですよね?
(ついやってしまいがちだけど。苦笑)
はて。これをどう伝えたらよいものか?
しばらく考えてみて、こう言った。
「じゃあ、先生と一緒に書いてみよう。
ここはこうだね?
・・・次は?
さっき書いた、これ、見てごらん?・・・手本の長さと一緒かな?」
「あれ?違うね。お手本はもっと短いや。」
「うん。そうだね。・・・その次は?
さっき書いた字はこっち向いて回ってるけど、手本はどう?」
「あれ?もっとこっち向いてる。」
「うん。そうだね。じゃあ、これはどう?」
とまあ、一つ一つ細かく説明しながら書かせてみる。
最後に、
「ちゃんと手本見て書いとった?」
「ううん。見てなかった。」
「ちゃんと見るって、どういうことかわかった?」
「うん!!わかった!!」(笑)
そうやって細かく注意しながら書いたら、・・・上手に書けるじゃないですか!
うん。この字!この子はこの字が書ける子なのよ!!(笑)
そこで初めて言ってみた。
「去年の今頃『あずき』って書いたのがすごく上手にできてたの、覚えとる?
先生、すごく嬉しかったけえ、ここにしばらく貼っとったんよ。覚えとる?」
「そうだっけ??」
「お正月にね、親せきが集まって来た時に見てね、言ってたよ。
『わ~、これ上手じゃね~。何年生?え??すごいじゃん!!』って。
今書いた字なら、『うん。そうだ。あの上手な子が書いた字だ』って、思えるよ。
でも、さっきのはどうだった?
こんな、ぐにゃぐにゃなふざけた字書くんじゃねえよ!!って、感じじゃん?」
「キャハハ!ほんとだ~!」
「一所懸命書いても、ちゃんと手本見れてなかったら、上手に書けないね~。」
「うん!わかった!」
じゃあ、比較しても良い時はいつ?
「前は良かったよ」って、言ってもいいのは、今がダメな時じゃなくて、今も良くなった時かな?
そしたら、前に良かったのも、今良くなったのも、両方が自分の中で喜びとなる。
だけど、前は良かったのに、今はダメって言われたら、・・・しょんぼりだもんね?
前にできていたことは今もできる!だから、何とか前を取り戻させてやってから、それを伝えよう。
今回、うまくできたから、良かった。(笑)
その子も急にやる気を出して書き続けてくれた。
やる気を出させる言葉を選ぶのは、・・・なかなかタイヘンですぞ。(笑)
よその子だから落ち着いて対応できるけど、これがわが子だったら、つい叱っちゃいそうだ。
すべてのママたちが、みんな落ち着いて言葉かけできたら、素直な良い子が育つんだけどね?
あなたは、わが子にかける言葉を、一瞬考えて選んでますか?