「着つけの先生ですか?」
電話がかかってきた。
どうやら半年ほど前に、結婚式場で留袖をお着せした方らしい。
その日はおそらく着つけ師は2人だったのだと思うのだが、たまたま着つけの順の関係で、その方の側のお身内を、私が全員着せたらしい。
その時のヘアセットの順番と、手すきの着つけ師の兼ね合いでそちら側のご親族を担当することになっただけのこと。
もう何か月も経っているし、その間何回も結婚式はあったし、詳しいことは覚えていなかった。
だが、あちら様はいたく気に入ってくださった様子で、「あの時ああだったんです、こうだったんです。」と、話してくださる。
そう言われればそんなことがあったかも?
なんて調子で、いやはや、申し訳ない・・・。(苦笑)
さて、その方がおっしゃるには、秋に着物を着る機会があるとのこと。
それまでに自分が着つけの練習をしたいと思っておられたようだ。
という話を聞いて、思い出した。
ああ、そうそう。
「私の友達が着付け教室をやっているから、そこに行ったら?」
と、教えてあげたのだった。
その方は、ご自身のお友達も今習っているから、同じところに行きたいんだと言われた。
聞いた住所からおそらく同一人物じゃないかな?と思い、
「着つけの他にもいろんなことを教えている人でね、こんなこと、あんなこともやってる楽しい人なのよ~。」
・・・って、言った言った!
と、思い出した。(笑)
だが。
娘さんは、「どうしてもあの時の着つけ師さんじゃなきゃイヤだ!」
と言うし、忙しくて、結局まだ習いに行けてないとのことで、お願いします。と。
何がそんなに気に入られたのか。
私たち着つけをする者にとっては、ごく自然なことだった。
もちろん、着つけの大前提として、きちんとお着せすること。
ひもがきつい。結び目が肋骨に当たって痛い。などということがないかどうか、確認しながら着せるのだが、
「きつくなかったし、崩れなかったし、お陰で快適に過ごせてごちそうもいっぱい食べることができた。」
これ、本来、日本人が来ていた衣服を身に着けるのだから、当たり前っちゃ、当たり前のこと。(笑)
その上で、その娘さんはまだ若い人だったんだけど、既婚者だから振袖のような派手な帯結びは避けたいと言われた。
その時の着物は訪問着。
やろうと思えば、派手な帯結びもOKな着物だ。
しかも、このごろではそう言ったしきたりにこだわる人も少なく、若いんだから振袖を着る。という方もけっこういらっしゃる。
でも、お身内の方も、ご本人も、二重太鼓にしてほしいと言われた。
(既婚者の礼装の結び方です。後ろから見たら四角く見えるやつ)
だから、二重太鼓を結んだ。
ただ、あまりにもさっぱりしすぎているかな?と思ったので、帯揚げだけ蝶々にしてみた。
嫌だったら普通のにしようと思い、
「こんなのはどう?」
と聞いてみると、ひどく気にいられたようで、大喜び。
・・・ということがあったのは覚えていた。
お話をお聞きしていて思い出したわけだが、思い出せて良かった。(ホッ)
どうしてそんなに嬉しかったんだろう?
電話の後で、考えた。
「近頃は、みんな派手にされますよ。」とは、言わなかった。
だって、お客さんは、ちゃんとした決まり事に従いたいと思っていたのが分かったから。
逆に、「これが正式なやり方だから。」という枠にとらわれたこともしなかった。
ちょっとは可愛くしてあげたいなと思って、「これはどう?」と、提案してみた。
もちろん、いやだと言われたら、普通に戻そうと思っていた。
どうやら、あの電話では、お客さんがそういうところを気に入ってくれたんじゃないかな?ということがわかった。
「着つけのクレームは、大体の場合が技術的なことじゃない。
ものの言い方や態度、そういうのが大クレームに発展することがある。」
と、いつかミーティングで式場の支配人が話しておられたが、正にそうなんだろうな~。
気に入られるのだって、単に技術が優れているからというだけじゃない。
目の前のお客さんが、何を望んでいるのか。
全身でそれを感じ取って、お応えしていくこと。
これは、マーケティングの先生からいつも言われることなのだが、
私も少しは、できるようになってきたのかな?
と、ちょっぴり嬉しいゾ。(^^♪
振り返って考えてみるのに、
お客さんから武内個人の連絡先を尋ねられるようになったのは、
どうもDRM(ダイレクト・レスポンス・マーケティング)を学び始めたころからのような気がする。
そして、名刺。
式場で積極的に自分から名刺を配ったりはしない。
そんなことしちゃ、叱られそうだ。
でも、お客さんから個人情報を求められた時には、すぐ渡せるように準備している。
これもやっぱり、大事かな~。
後につながるとお互い嬉しいし。(笑)
というわけで、嬉しいお電話をいただいたので、今日は長々としゃべってみました。(笑)